砂上の城〜秘密を抱えた少年の数奇な運命
「カイン、お疲れ様。
いやぁ、今日のサラは一段ときれいだな。まるで女神のようだ」

解放されたカインにスッとさり気なく近づいてきてくれたのはアベルだ。

「ありがとうございます。
アベル、惜しいことをしたと思われたのでは?」
「まぁ、少しな」

アベルがいつものように冗談を言いながらそばにいてくれるだけで、ホッとする。カインの表情も和らいだ。

「ま、期待以上だな、サラのヤツ、やるじゃないか」
「サラは好奇心の塊です。行動力と瞬発力に関しては誰にも負けませんからね」
「慎重派で決断力に欠ける陛下にはちょうどいい。陛下のあんなうれしそうな顔初めて見たな。あれは、かなりサラに惚れこんでる。
あんまりサラにかまけすぎて、正妃を疎かにしないように気をつけないと」
「そのあたりは、サラも十二分に心得ています。上手くやるでしょう」

アベルとカインは会場の隅で全体を見渡す。二人は今日の主役を引き立てるように、なるべく目立たないようにしていた。

「子供が出来たら、オルディン家の跡継ぎだな。お前も少しは肩の荷が下りるだろう」

「期待は大きければ大きいほど外れた時のショックも大きい。何も望まず、何も求めない。
私はただ、現実を受け止めて今を生きるだけです」


カインはそう言って、貴賓に囲まれ優雅にほほ笑む姉の姿を見た。
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