砂上の城〜秘密を抱えた少年の数奇な運命
その時。
焼きあがったばかりの鶏の丸焼きが運ばれてきた。ホカホカと湯気が出て、おいしそうなにおいが会場に漂ってくる。


鶏肉のにおいをかいだとたん、カインは体調の変化を感じた。
もともと、あまり肉は得意じゃない。しかも、今夜は国内外の貴賓が集まる中、サラが失態をおかさないか、その上アベルとブリュオー王国大使の対応と、かなり気を使っている。

サラに近づくことは諦めて、カインは近くの椅子にそっと腰掛けた。
座ればいくらか楽になった。


「オルディン公爵。サラ様は素晴らしい。教養の深さには驚かされました。
ブリュオーの人間としては残念ですが、一人の男としては恥ずかしながら正妃ジョセフィン様では物足りない陛下のお気持ちがわかる気がします」


サラと少し話を交わしてきたロシェ侯爵が感心した様子で戻ってきた。

ーーよかった。サラは上手くやれたみたいだ。

気分が悪いまま、当たり障りのない会話でその場をやり過ごす。

そんなことをしていたら、体調はますます悪化していった。

せめて新鮮な空気を吸いたいと、カインはバルコニーから外に出ようとした。

だが。


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