砂上の城〜秘密を抱えた少年の数奇な運命
「……カルヴィン様、もしかしたら…」


モレーはスープの器に蓋を戻し、カインのベッドから離れたテーブルに置いた。

生まれた時からずっと一番近くでカインを見てきた。
だからこそ、このところのカインの様子の変化にも気づいて疑いを持っていた。
スープの匂いにこれほどの反応をしたのは初めてだ。それが、抱いていた疑いを確信に変えた。


「おかしいなと、思っていたのです。このところ、月のもののお手当てをしておりません。公爵としてのお仕事がお忙しくて、体調を崩しているのかとも考えておりましたが」


そこで言いよどむモレー。

母のようにいつでもカインを見守り育ててくれたモレーがカインに対してはっきりと物が言えないとは、珍しいことだった。
そのことがカインの心をざわつかせる。

「何が言いたい、モレー」

カインはベッドからゆっくり体を起こす。おかしな様子のモレーとまっすぐ視線を合わせた。
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