砂上の城〜秘密を抱えた少年の数奇な運命
「御子が宿ったのかもしれません」


意を決してモレーが発した言葉は、カインの思考を停止させるほど衝撃的な内容だった。

理解の域を超えた発言にカインは目を丸くし、手でその言葉を払うような素振りをした。

「モレー、馬鹿なことを言うな」
「馬鹿なこと?いえ、男と女が夜を共にすれば、結果として子ができることは自然の理でございます。
わたくしは、カルヴィン様が男性として生きていかねばならぬというお気持ちも、置かれたお立場も十分わかっております。
ですがカルヴィン様のお体は紛れもなく女性なのです。子を成すことができる、正常な大人の女性なのですよ」
「ありえない。そんな……」

モレーはハラハラと涙を流しながら、カインが事実として受け入れまいと、払うように振りつづける手を、ぎゅっと両手で包んだ。

ひどく冷たくなっていたカインの手。

それを包んでくれたモレーの手がとても温かかった。
その温かさにハッと我にかえる。ぼんやりしていた思考が動きだした。

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