砂上の城〜秘密を抱えた少年の数奇な運命
「自然の理か。迂闊だった。
…確か“カガチ”という名の薬草だったな、すぐに用意してくれ」
「カルヴィン様!あれは娼婦が使うような薬です!ちょっと量を間違えれば死に至る猛毒ですよ!」
「あぁ、わかってる。だからモレーに頼んでいる。産婆だったモレーなら必要な量がわかるね?
娼婦に子供ができたときにはカガチを煎じて飲ませ、流させる。常識だろう?」

顔色ひとつ変えずに猛毒の堕胎薬の名を口にするカインに、モレーは絶句した。

そして、自分の立場を高級娼婦だと位置づけているのだと知る。

「まずはアルベルト王子にご相談しましょう」
「その必要はない。王子には関係のないことだ。
モレー、余計なことはいいから早くしてくれ。一刻も早くなかったことにしたい」
「…ッ!」

モレーは泣きながら部屋を飛び出していった。
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