砂上の城〜秘密を抱えた少年の数奇な運命
部屋に一人きりになってカインはそっと自分のお腹に手を当てた。
ーー本当に、ここにいるのか?
信じられない。
長姉はなかなか子が授からず、結婚後三年経ってやっと女の子を一人授かった。
次姉は五人の子宝に恵まれたがいずれも体が弱く、生まれてもすぐに亡くなってしまう。最初の三人は女の子。四人目にして待望の男の子を授かったがこの子も生まれてまもなく亡くなってしまった。今は最初に生まれた女の子と最後に生まれた女の子だけが、すくすく育っている。
子が授かることも、健康に育つことも、尊い奇跡だと思っている。
だからこそ、自分には縁のないものだと思っていた。
なぜなら恋人同士が想いを込めた行為でも、夫婦が子供を持つための行為でもなかった。
この体はただ、アベルの為の玩具に過ぎない。
神よ。
これ以上私を翻弄しないでほしい。命を授けてどうせよというのだ。
私は男としてしか生きられない。私ではなく、姉たちに命を授けてほしい。この子はあなたの元に返すから、どうかサラにオルディン家の後嗣となる男子を授けてほしい。
この身は砂上の楼閣。何も望まず、何も残さず。ただ通り過ぎていく“時間”として存在するしか許されないのだから。
カインはそっと目を閉じた。
意識が遠のいていく。
神よ、どうか、この子に私には与えられなかった”親からの愛情”がたっぷりと注がれるような、幸せな人生を与えてあげてください。
望まれて、愛される立場で生まれることができる人生を。
ーー本当に、ここにいるのか?
信じられない。
長姉はなかなか子が授からず、結婚後三年経ってやっと女の子を一人授かった。
次姉は五人の子宝に恵まれたがいずれも体が弱く、生まれてもすぐに亡くなってしまう。最初の三人は女の子。四人目にして待望の男の子を授かったがこの子も生まれてまもなく亡くなってしまった。今は最初に生まれた女の子と最後に生まれた女の子だけが、すくすく育っている。
子が授かることも、健康に育つことも、尊い奇跡だと思っている。
だからこそ、自分には縁のないものだと思っていた。
なぜなら恋人同士が想いを込めた行為でも、夫婦が子供を持つための行為でもなかった。
この体はただ、アベルの為の玩具に過ぎない。
神よ。
これ以上私を翻弄しないでほしい。命を授けてどうせよというのだ。
私は男としてしか生きられない。私ではなく、姉たちに命を授けてほしい。この子はあなたの元に返すから、どうかサラにオルディン家の後嗣となる男子を授けてほしい。
この身は砂上の楼閣。何も望まず、何も残さず。ただ通り過ぎていく“時間”として存在するしか許されないのだから。
カインはそっと目を閉じた。
意識が遠のいていく。
神よ、どうか、この子に私には与えられなかった”親からの愛情”がたっぷりと注がれるような、幸せな人生を与えてあげてください。
望まれて、愛される立場で生まれることができる人生を。