砂上の城〜秘密を抱えた少年の数奇な運命

「モレー?どうした、こんな時間に何処へ行くつもりだ」

カインの部屋から戻るなり、号泣したままモレーは外套を羽織った。その異常な様子にモリセットが声をかけた。

「アルベルト王子にお会いしてきます」
「馬鹿な。お前がいきなり押しかけてお会いできるような御方ではない。門前払いされるならまだましで不敬罪に問われ牢獄行きかもしれぬぞ。一体何があった」

尋ねるモリセットにモレーは固く口を一文字に閉じてただ首を横に振る。

「カルヴィン様に関する大事なこと、なんだな?」

それだけは間違いない。モレーはこくり、と頷く。

「わかった。これを持っていけ。オルディン家からの緊急伝令時に使用する証明書だ。これがあれば、ひょっとすればお時間をいただけるかもしれない」

「…ありがとう。モリセット、私にもしものことがあったら、カルヴィン様のことを頼みましたよ」

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