砂上の城〜秘密を抱えた少年の数奇な運命
頭をガンと殴られたような、衝撃。

モレーの言葉は、アベルの予想を超えている内容だった。


ーー懐妊…子供か?


心当たりなど探すまでもない。当然の結果だ。


「カインは、何と言っている?」

「…一刻も早くなかったことにすると、猛毒の堕胎薬を用意するように指示されました。アルベルト殿下には知らせる必要はない、と」

カインらしいというか。
顔色ひとつ変えずに淡々と毒薬の名を口にする様子が手に取るように想像できる。

「ですが。子供は男と女で作るもの。新たな命の未来をカルヴィンさまだけで決めていいはずがありません。アルベルト殿下のお心をお伺いしたく、ここへは独断でまいりました。
あるじの意思に背くことは重大な罪。ですから処断は覚悟のうえでございます。
それでもカルヴィン様に宿った命は、私の命をかけても失ってはいけない命だと…」

モレーはアベルの前にひれ伏して敬意を払いながらも、顔は青ざめ体はガタガタと震えている。
命がけでカインのお腹の子を守ろうとするその姿に感銘を覚える。
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