幸せにしたいのは君だけ
私がこの総務課に正式に異動して数日が過ぎた。

事前に教えていただいていたとはいえ、本腰を入れて取り組むのとはわけが違い、最初は戸惑いが大きかった。

初めて目にする書類も多く、そもそも備品の数や保管方法を知るだけでもひと苦労だった。


船越さんはとても気さくな人だった。

ひととおりの説明をしてくださった後、改善したいと思った点は遠慮なく変えてくれていいから、と言ってくれた。

自身も改善したい点は多々あるそうだが、手が回らずに諦めているものが多いからと教えてくれた。


そんな温かな先輩の力添えもあり、私は仕事を覚えるかたわら、収納場所をまとめたり、些細な箇所から変更させてもらっていた。

効率化のための作業は思った以上に楽しかった。

その時も以前に圭太さんに言われた言葉が蘇り、胸が苦しくなった。


『ああ、佳奈はひとつひとつの仕事をこなすのも上手だけど、どちらかというと全体を見回す能力が優れていると思う。足りない部分をさり気なく補ったり、誰かの補佐に入るのもうまいから。視野が広いんだな』


日常がすっかり彼に染められている今の状態から、私は離れられるのだろうか。


「悪いんだけど、応接室の備品交換に行ってくれない? さっき営業課が使用したみたいなのだけど、文房具の備品が不足してるみたいなの。先月きちんと確認したはずなのに」


船越さんに頼まれて了承する。

必要な文房具を抱え、応接室に向かう。

一室、使用中だったので、空いている部屋の点検から行った。
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