恋の忘れ方、怖がりな君の愛し方。【番外編追加】


──相澤、俺と車に乗るのは平気?

──それは、大丈夫だけど…

話の途中で、ふとさっきのそんな会話が蘇りフリーズする。一緒に車に乗るのは平気かと聞かれ、気がつけば自分は大丈夫だと返事をしていた。

どうして大丈夫だと思ったんだろう。
私は男性と密室状態でいる事が苦手だ。エレベーターも部屋が小さめのカラオケボックスでも駄目だった。こんな体質になってから一度も利用していないがタクシーもきっと駄目だろうとずっとタクシーでの移動も避けている。

それが、砂川君と密室状態にいる今は何故か体にも精神的にも異常は無い。後部座席ではなく助手席に座ってもそうだとは自信を持って言えないけれど、それでも私にとってそれは大きな発見だった。

「えっと、私、男の人と二人で車に乗れてるんだなぁと思って。多分他の人だと発作か何か起こしちゃうと思う。エレベーターとかも駄目なんだ」

「そうか。もしかしたら、発症前に相澤と関わりがあった人間との接触なら、平気なのかもしれないな」

「…なるほど」

運転席から返ってきた言葉にそう呟いて頷く。
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