恋の忘れ方、怖がりな君の愛し方。【番外編追加】
質問に答えて貰えないまま、つれてこられたのはタワーマンションの駐車場だった。
(・・・そんな、まさか)
嫌な予感が冷や汗となり体を伝う。
「降りろ。さっきみたいに俺に抱えられたくなかったら自力でな」
後部座席のドアを開けてそう言った羽瀬君を、気づけば私は思いきり睨みつけていた。
「嫌です!私、あんなに降ろしてって言ったのに」
「何言ってんだ、だから降ろしてやるって言ってるだろ」
「そういう事言ってるんじゃありません!大体ここ、もしかしてご自宅ですか?」
「そうだけど」
嫌な予感的中だ。あっさりと肯定され、思わずガクッと肩を降ろす。羽瀬君は、私の話を聞いてくれていなかったのか。
「駄目です、だから私に関わるのは危険だってあれ程・・・!」
「降りないつもりか?じゃあさっきみたいに強制的に運ぶけどいいのか?」
そんな羽瀬君の言葉に反射的に身が竦む。さっきも抱きかかえられた後、嫌な動悸と鳥肌が収治まるまでに随分と時間がかかった。
一瞬走って逃げてしまおうかとも考えたが、それは不可能だとさっき身をもって経験済みだ。下手に逃げようものなら、さっきみたいに強制的に運び込まれてしまうに決まっている。
そうなる位なら、沙和の体にとっては自分の足で移動する方が幾分もマシだ。
「・・・・・・。」
唇を噛み、もうどうする事も出来ないと車から自力で降りる。
羽瀬君が車のドアをバタンと閉め、ついてこいと言わんばかりに先を歩いた。