恋の忘れ方、怖がりな君の愛し方。【番外編追加】

あんなに可愛い女の子と寝食を共にし、しかも家に二人きりなんて何の据え膳かというような状況で大人しく手を出さない男なんて果たしているのだろうか。

子供ではないのだから、通常だったらアウトのような気がする。間違いが起ってもおかしくはない。

…でも、沙和ちゃんはPTSDを患っているのだ。男性に触れる事はおろか、そうやって共同生活を送る事も本人にとっては相当なストレスだろう。

いくら可愛くて良い子で、…万一その隼斗の友達が沙和ちゃんの事を好きになってしまったとしても、そんな状態の沙和ちゃんに手を出すことはしないだろう。

もしそんな事をするようなら、本当に沙和ちゃんの事を好きではないのだ。

隼斗の友達だというのならそうだ。そうだと信じたい。隼斗も信用出来るからと思って承諾したんだろうし、これ以上私が何か口を挟めるわけでもなかった。

──でも、本当にそれでいいの?

喉元まででかかった言葉は、そんな事を尋ねるのはあまりに野暮であると呑み込んだ。
< 214 / 286 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop