恋の忘れ方、怖がりな君の愛し方。【番外編追加】
──大丈夫だ、怖くない。
砂川君の優しい声でハッとして、興奮していた頭が冷静さを取り戻す。
息のリズムを戻しながら、私はまた椅子に座った。
「それで、背後に立っていた天津先輩は相澤に何をしたんだ?」
そう言って砂川君が声の調子を変えないままに話の続きを促す。
「そのまま、肩を強く、引かれて、強引に馬乗りになられた後に、天津先輩は、みたこともないような顔で笑ってた…」
豹変してしまった好きな人。
いつだって物腰柔らかで爽やかに微笑んでいた天津先輩の変わり果てた姿がそこにはあった。
「私が、天津先輩からお姉ちゃんを奪って、天津先輩を変えてしまったんだって思った…。お姉ちゃんは、私のせいでもう何処にもいなくなってしまったから」
変わり果てた天津先輩は、私の耳元で何度も私の事を"沙菜"と呼び、無遠慮に私の体を弄った。
「怖くて、怖くて、私が天津先輩の下でどんなに暴れても、力が、全然敵わなかった…っ」