恋の忘れ方、怖がりな君の愛し方。【番外編追加】

それでも、せっかく順調に現実エクスポージャーの課題をこなせた矢先のこの結果が悔しい。

一瞬でも砂川君にまで激しい恐怖心を抱いてしまった自分が情けなくて悲しい。

そして、過去の記憶にいつまでも囚われているのだという事実を痛感して苦しかった。

「相澤、一ついいか?」

膝の上で手を握りしめて俯く私に、砂川君も少し伏せ目がちになってそう尋ねる。どうしたんだろうと少し不思議に思いながら頷くと、砂川君はじっと私の目を見つめながら言った。

「お姉さんが亡くなったのは、相澤のせいじゃない。悪いのは全部お姉さんを刺したストーカーの男であって、相澤は何も悪くない。

…本来、患者の想像エクスポージャーに対して医者が個人的な見解を伝えるのは控えなければいけないんだ。だからこれは、一人の友人としての言葉だ」

「………っ」
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