虹色アゲハ
そこで。

「聡子さんっ」
例の天然記念物男に、腕を掴まれて引き止められる。


「よかった会えて。
前にここで会った時、すごいサマになってたから…
もしかして夜の仕事が本職じゃないかなって、この辺ウロついてたんだ。
ほら、マンションには来るなって言われてたからさ」

「…でもその後に、しつこい男は嫌いとも言ったはずだけど?」

「言ったね」
鷹巨はふっと吹き出した。

「でも好きと嫌いは紙一重だから。
嫌われても会いに来なきゃ、何も始まらないかなって」

「いや来られても何も始まらないから」

「だとしても、やれるだけやってみたいんだ」

「だからって…
やり手営業マンが聞いて呆れるわ。
毎週ストーカーするとか、あんた暇人?」

思わず倫太郎の口調を真似て突っ込むと、ますますその本人に会って甘えたくなった揚羽だったが…

何かと理由をつけて家にも来てくれないほど、一線引かれてる関係だと。
改めてその感情を押し潰す。


「まさかっ、これでも多忙だよ?
でも聡子さんのためならいくらでも時間作るし。
前みたいに、元気がない時はいくらでも慰めるよ?」

そう言われて…
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