虹色アゲハ
そういえば人の表情を逃さない男だったと、思ったと同時。
甘えどころを見つけて、だったらまた利用させてもらおうと思い立つ。


「ふぅん、じゃあ楽しませてよ。
楽しくなかったら速攻帰るからね?」

「あははっ、仰せの通りに。
では女王様、お手をどうぞ」

「…バカなの?
指名客に彼氏と思われたら、って…
ちょっと!」

鷹巨は強引に揚羽の手を取り、走り出した。

「走ったらわかんないよっ」

「余計目立つわよバカ!
しかもヒールなんだから考えなさいよっ」

「あそっか、じゃあ…」
くるりと体を翻した鷹巨は、ひょいと揚羽を抱き上げた。

「ちょっ…
やめてよ!下ろしなさいよっ」

「暴れると余計目立つよ?
俺に抱き付いて、顔隠してた方がいんじゃない?」

こんっの策士!
あとで覚えてなさいよっ?
そう思いながらも、その温もりに癒しを感じてしまうと…


「…うん、いい子」

「はああ!?
誰に向かって言ってんのっ?」

「ほらっ、顔隠さなきゃ」

ああもう!
もどかしい思いで、再びぎゅっと抱きつく揚羽。
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