虹色アゲハ
通話はそんなふうに終わったものの。

普通の女の子みたいに、あどけなく笑ったり、照れたり焦ったり困惑したり…
岩瀬にだけ見せる可愛らしい揚羽の姿に、倫太郎の心は打ちのめされる。


「ごめんね倫太郎。
ええと、ヤバい組織なんだっけ」

「ん…
つか危ねぇし、男出来たんなら足洗えば?」

「…そんなワケにはいかないわよ。
あの男だけは、絶対にケリつけなきゃいけないし」

交際を否定しなかった揚羽に、胸が張り裂けそうになる倫太郎。

一方揚羽も、簡単にバディを解消しようとする倫太郎にショックを受けていた。


「ただ、その(男絡みの)事なんだけど…
これからは鷹巨の家にいる時も、帰宅扱いでいいから。
倫太郎は気にせず眠って?」

実際のところ、鷹巨との関係はうやむやなままだったが…
倫太郎に迷惑や心配をかけないように、交際の否定をせずそう言ったのだった。

でも当の本人は。
これからは鷹巨に守ってもらうと言われた気がして…
もう自分は用無しだと切り捨てられた気がして…

胸が切り裂かれて、苦しくて…


「……わかった」
やっとの思いで、その一言を絞り出したのだった。



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