契約結婚!一発逆転マニュアル♡
彩葉の呟きなど聞こえず部署へと戻り、満足気に仕事に取り掛かった依舞稀は、副社長室で遥翔と八神が何を話しているかなど、知りもしなかった。

「なるほどな……」

「どうされますか?」

「依舞稀が自分でケリを付けたのならば、一応は現状維持だ」

「かしこまりました」

副社長室では、八神が遥翔に依舞稀と彩葉の遣り取りを報告しているところだった。

最近、依舞稀の様子がおかしいことなど、遥翔は始めのうちから見抜いていた。

依舞稀が望むのならばいつでも手を貸す準備は出来ていたし、職権乱用と言われようとも依舞稀や彩葉の移動も視野に入れていた。

収拾がつかなければ、最悪の場合、彩葉達の解雇も考えていたのだ。

手は出さないという条件のもと、八神に依舞稀の周りの調査も頼んでいたし、毎回事細かに報告を聞いていたのだ。

知らぬは依舞稀だけということだろう。

「どんな理由であれ、お客様に迷惑を掛ければ立派な解雇理由になったんだがな」

「それは依舞稀さんが未然に阻止されました」

「さすがだが、これでまた解雇理由がなくなった」

遥翔は深い溜め息をつき、八神の淹れたコーヒーを啜った。

「専務を納得させるだけの理由がなければ、解雇は難しいでしょうね。ただでさえ専務は野心家で社長の椅子を狙っていた男です」

「それが叶わないと分るや、自分の娘との縁談を持ち込んできたヤツだしな」

そう、遥翔がまだ副社長に就任する前は、専務自身がその椅子を狙っていた。
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