出逢いがしらに恋をして
「そうだ、プレゼンの日、決まったよ」

 コーヒーを手に席に戻ると、宮沢さんが手帳を見ながら言った。

「来月15日の月曜」

「あっ、15日ですか?」

「何か仕事の予定が入ってるの?」

「いえ、なんでもないです」

「なんか気になる言い方だね」

 宮沢さんはコーヒーを一口飲んでから、わたしと目を合わせた。

 額にかかった髪がうっとおしいのか、長い指で掻きあげている。

 誰でもする仕草なのに、宮沢さんだとどうして、こうも違って見えるんだろう。

 どうしてこんなに素敵なんだろう。
 
 恋愛感情を封印したなんて嘘だ。

 やっぱり、どうしようもなく、この人のことが好き。

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