レーセル帝国物語 皇女リディアはタメグチ近衛兵に恋しています。
ここには毎夜,リディアとデニスが逢瀬を重ねている四阿があるが,庭自体も大したものだ。
まず,広い。これは言わずもがなである。その広い庭は,宮廷専属の庭師によって隅々まで手入れが行き届いており,四季(しき)折々(おりおり)の草花や樹木が植えられている。
「――カルロス様,こちらが中庭ですわ」
「ありがとうございます。素晴(すば)らしい庭ですね」
この時の二人の褐色肌の青年の態度は,まるで対照(たいしょう)的なものだった。
「私の国には,四季がありませんので。こうして,季節の植物に触れられる貴重(きちょう)な機会を頂けて,とてもありがたいです」
カルロス王子の方は,たいそう上機嫌だ。初めて(かどうかは分からないが)目にする「季節」というものに,気分を高揚(こうよう)させている。
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