レーセル帝国物語 皇女リディアはタメグチ近衛兵に恋しています。
「――ところでリディアよ。先ほどのそなたの言葉は,一体どのような意味なのだ?」
「先ほどの,とは……。ああ,『サルディーノ宰相の耳には入れたくない』と申し上げたことでしょうか?」
父が頷く。リディアは大広間のドアを見つめた後,改めて声を潜めた。
「お父さま,これはカルロス様から伺った話なのですが……。サルディーノ宰相はどうやら,要注意人物のようなのです」
彼女は午後に中庭の四阿で,王子から聞いた話を父にも聞かせる。
「――なに?あの男はそなたに甥を婿入りさせることで,帝国の権力まで手中にしようとしているというのか?」
「ええ。ですから,この度のわたしとの縁談も,カルロス王子自身のご希望ではなくて。彼もまた,伯父であるあの男の(こま)として利用されている,ということですわ」
< 165 / 268 >

この作品をシェア

pagetop