レーセル帝国物語 皇女リディアはタメグチ近衛兵に恋しています。
「では,その頃にまた降りて参ります」
リディアは父に一礼して,食堂を出た。
階段に向かう廊下の途中で,すれ違いざまに彼女に声をかけてくる者が……。
「や,これはリディア殿下。おはようございます。今日もお美しいですなあ」
(……!サルディーノ・アドレ!)
つい先ほどまで,食堂で話題に(のぼ)っていた要注意人物との遭遇に,リディアは動揺を禁じ()ない。けれど,それを悟られてはいけないと思い,あえて平静を装った。
「おはようございます,サルディーノ様。カルロス様は,もうお発ちになりまして?」
「はい,つい先ほど。私は港町で美しい海を眺めるよりも,ここに美しい姫様と残った方が楽しいのですがねえ」
(よく言うわよ,白々(しらじら)しい!)
サルディーノに内心毒づきながら,リディアはにこやかに相槌を打つ。
< 192 / 268 >

この作品をシェア

pagetop