レーセル帝国物語 皇女リディアはタメグチ近衛兵に恋しています。
迷いはあったけれど,必死にそう思い込もうとしていた。でも,彼によく似たカルロスと対面した瞬間,自信が揺らいでしまったのだ。カルロスの,吸い込まれそうなくらい澄み切った瞳に見入ってしまったことで。
「そんなこと……,あるわけないでしょう!?わたしの彼への想いは,恋心で間違いございませんわ!」
リディアは怒りを(あら)わにして,サルディーノに反論した。
「幼なじみへの情愛」というのなら,ジョンに対してもその感情は抱いている。けれど,デニスに対しての感情は,それとは明らかに違っていた。これだけは自信があるのだ。
愛する人とでなければ,口づけなんてできない。現に,ジョンやカルロスとそういう仲になることを,リディアは望んでいない。
「お話はそれだけですか?でしたら,わたしは忙しいので,これで失礼致します」
去り際,リディアはサルディーノに忠告した。
「サルディーノ様,これだけは申し上げておきますわ。権力に(おぼ)れる者は,いずれ自らの権力に(ほろぼ)されるでしょう。お気をつけ下さいませ」
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