レーセル帝国物語 皇女リディアはタメグチ近衛兵に恋しています。
「君主とはこうあるべきだ」というお手本のように,リディアには見えた。
そしてその集団の中には,スラバット王国の宰相・サルディーノの姿もある。
彼がどのような思惑(おもわく)で,この視察に同行したいと言い出したのか定かではないため,油断ならない。が,逆に言えば,彼もイヴァン皇帝の本当の狙いを知らないのだ。それは父娘にとって,かえって好都合だとも言える。
「リディアよ,大臣から聞いているな?今日これからの視察には,このサルディーノどのも同行する。よいな?」
「ええ,伺っておりますわ。――お父さま,ちょっとよろしいですか?」
リディアは後半部分を小声で言い,父をサルディーノの視界に入らない死角(しかく)(さそ)った。
「お父さまはもしかして,あの男を嵌めようとなさっているのではございませんか?」
娘の問いかけに,イヴァンは「ああ,その通りだ」と頷く。
< 206 / 268 >

この作品をシェア

pagetop