レーセル帝国物語 皇女リディアはタメグチ近衛兵に恋しています。
「……あなたが命じたのでしょう?『皇女を亡きものにしろ』と」
リディアは穏やかに問う。けれど,静かな怒りほど恐ろしいものはない。
「いや,わ……私は知らん!私は,何も」
「嘘よ!わたしは,カルロス王子から聞いたもの!あなたが,この帝国の実権まで奪おうとしているって。そのために,わたしが邪魔になったのでしょう!?わたしがカルロス王子との縁談を断ったから,急きょ計画を変更したのでしょう!?」
言い(のが)れしようと試みるサルディーノを遮り,リディアは畳みかけた。
彼女はもはや,冷静さを失っていた。
「サルディーノ・アドレ!わたしはあなたを決して(ゆる)さない!」
「ダメだ,リディア!」
「リディア,やめぬか!」
怒りで我を忘れているリディアの耳には,愛する男の声も,父の制止する声も届かなかった。剣の腕が(すぐ)れている彼女は,このままではサルディーノを殺してしまいかねない。
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