レーセル帝国物語 皇女リディアはタメグチ近衛兵に恋しています。
(別に,焦らなくてもいいのに)
そんなに自分に自信がないのかしら?とリディアが笑うと,デニスはちょっとムッとした。
「――さて,リディア。そろそろ宿に戻るとするか。オレはともかく,リディアがいつまでもいなかったら,ジョンのヤツが発狂しかねないからな」
発狂……。確かに,ジョンなら()()る。そう思ったリディアは笑いながら,「ええ,そうね」と頷いた。
二人で,浜辺を宿まで歩く。リディアの顔はまだ火照(ほて)ったままで,胸も高鳴ったまま。夜の涼しい潮風に当たっても,それはなかなかおさまってくれない。
「――ねえ,デニス」
「ん?」
リディアが真剣な声で,デニスを呼ぶ。(さいわ)い辺りは真っ暗だし,ランタンの(たよ)りない灯りだけなら,彼女の顔の色はデニスに見えない。
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