夢の言葉と約束の翼(下)【夢の言葉続編⑦】

本当に、このままでいいんですか?
"ありがとう"よりも先に浮かんだのは、そんな言葉。
するとそんな私を察したのか、兄上が遮るように話す。

「近いうちに、また会おう?何かお祝い用意しておくから!ねっ?」

そう言われて、胸が締め付けられた。
それは"真実"を知りながら、黙っている罪悪感。

ミネア嬢の見舞いと、兄上に話したい事があって病室を訪れた夜に……。

『言えばいいじゃない、みんなに……。
"僕の子供じゃありません"って、言えばいいじゃない!』

偶然聞いてしまった、二人の秘密。
その事を知りながら、私は兄上の相談に乗る事もアカリ様にその真実を伝え会わせてやる事もしていない。
クリスマスイブの夜に、アカリ様をこの手で護ってやる事こそが唯一私に出来る事だと思ったが、本当にそうなんだろうか?

妙な想いと、胸騒ぎが消えない。
これは、先程シャルマ様に対して変化を見せていたあの兄上を見たせいなのか?
今の兄上を見ていると、"何か"を思い出すんだ。
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