諦めて結婚いたしましょう~一途な御曹司の抑えられない独占欲~
「お前ももう二十四、理人くんも二十六か。先日吾妻社長とも話していたんだが、そろそろ結婚について話を進めてもいい頃合いかもしれないな」

 淡々と話す父の言葉に、思わずぎくりとした。

「……もう少し待ってもらえませんか」

 私はひと呼吸置いてから答える。喉が引き攣り、絞り出した声はかすかに掠れていた。

「なにか心配事でもあるのか?」

 父が眉間にシワを寄せる。一見わかりづらいけれど、これは私を心配してくれているのだ。

「理人さんにはなにも。私の問題なんです。……ほら、花嫁修業もろくにできていないので」

 私が言うと、父は考えを巡らせるように口を真一文字に結ぶ。

「……ただ、このままずるずる婚約したままというのも良くない。長くは待てないぞ」

 父の答えに、ほっとして肩の力を抜いた。

 私が「はい」とうなずくのを見て、父はその場から立ち去る。私はそのうしろ姿が曲がり角の奥へと消えるまで見届けた。
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