諦めて結婚いたしましょう~一途な御曹司の抑えられない独占欲~
 私がお会いしたときには、特段多くをお話しするような人ではないけれど、いつも好意的に接していただいていた。そんなわけで、就職するまでその噂を耳にしたことがなかった私はとても驚いたのを覚えている。

 しかし、あの吾妻グループの頂点に立つ人だ。

 普段の姿がどちらなのかは私にはわからないけれど、誰にでもありのまま接することが難しい立場だというのは理解できる。

 理人さんも、いつか跡を継ぐ存在として幼少期から厳しく育てられたのかもしれない。私も似たような環境だったから。

 それでも、礼儀やマナー、古城の人間としての心構えなど色々と叩き込まれていく日々の中で、両親は私が行きたいと言えばどこにでも連れていってくれた。

 とくになにかを制限された覚えもなく、そういう面では友達とギャップを感じる部分は少なかったかもしれない。

 子供だった理人さんは、遊園地に行ってみたいと思ったことはあったのかな。

 なんとなく心臓をきゅっと掴まれたような気がした。
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