諦めて結婚いたしましょう~一途な御曹司の抑えられない独占欲~
「理人さん」

 呼びかけながら、私はベンチから立ち上がる。テーブルに手をつき、うんと身体を前へと乗り出した。

 あと少し。

 おもむろに視線が絡み合う。理人さんは据えるような眼差しをこちらに注いだ。彼の美しい顔が眼前に迫り、シトラスのような爽やかな香りに鼻腔(びこう)をくすぐられる。

 しかし、鼻先が触れ合いそうな直前――。

 ……やっぱりダメだ。

 突如不安と恐怖に気圧され、私は動けなくなった。

「落とすとか言っといて、お前の本気はそんなもんかよ」

 言い終えた理人さんが、私の後頭部を勢いよく引き寄せた。瞬く間もないほどに、唇になにかが押し当てられる。

 脳が揺れるような感覚があった。

 ……これって……。
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