諦めて結婚いたしましょう~一途な御曹司の抑えられない独占欲~
 呆然とする私の唇から熱が離れていく。ぼんやりとしていた視界の中で、徐々に理人さんの顔が鮮明に浮き上がっていった。

 私の頭を固定したままの彼が、目の前にいる。

「そんなんだからままごとって言ってんだよ。バーカ」

 理人さんは淡々とした口調で言う。

 ようやくなにが起こったのか理解した私は、羞恥に全身がかあっと熱を持つのがわかった。

 私、今……理人さんにキスされた?

 改めて呑み込もうとするとさらにいたたまれなくなった私は、思い切り唇を噛み締める。

 どうしよう……。ひどく照れくさいのに、理人さんからキスされた事実が嬉しくて堪らない。

 両手で口もとを覆った私は、視線だけを理人さんに向けた。目が合うだけで、鼓動はひと際大きく跳ねる。
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