諦めて結婚いたしましょう~一途な御曹司の抑えられない独占欲~
「……あの、もう一回お願いできませんか?」

「はぁっ?」

 私の申し出に、理人さんの表情が崩れた。

「せっかくの理人さんとの初めてのキス、不意打ちじゃなくて次は――」

「二度とするか。行くぞ」

 私の言葉をぴしゃりと打ち消した理人さんは、カバンを持って行ってしまう。

「理人さん……! ちょっと、置いていかないでくださいよ!」

 荷物を持った私は、走って追いかけた。

 心臓はまだ波打っている。身体が火照り、ふわふわとした不思議な感覚だった。

 すると、ふとある考えが脳裏を掠める。

 ……今思えば、理人さん、手慣れていたような気がする。私は経験がないからよくわからないけれど、初めてであんなキスなんてできるのかな。

 躍っていた心に、ひと粒の黒いシミが拡がっていく。

 もしかして理人さん、こういう経験が豊富だったりするのだろうか。
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