嘘恋のち真実愛
部長は私の質問に苦笑した。

「なかなか突っ込んだことを聞くね。給料が気になると聞かれたのは初めてだ」

「すみません……」


高そうなマンションだと建設している時から思っていた。どんなセレブな人が住むのかなと興味も持っていたから、つい聞いてしまった。

だけど、上司に聞くことではない。


「いや、会社での芦田さんからは想像も出来ない質問だけど、ここでの芦田さんなら想定内の質問かな。でも、お金のことは内緒ね」

「そうですよね……本当にすみません」

「何度も謝らなくてもいいよ。彼女役の上で必要ならその時に話すね」


穏やかに言われて「はい」と小さな声で返す。そういえば、彼女役とはどんなことをするのだろう。

どんな場面で部長のプライベートを知る必要になるのか……安易に受け入れてはいけなかった?

今さら出来ないと言えないけど、不安な気持ちが増長していく。

立派に偽りの恋人を演じられる自信はない。翌日からいつ依頼が来るのと、毎日ビクビクしていた。

しかし、一週間が経過しても部長からは業務のこと以外の指示がない。もしかして、彼女役は必要なくなったのかな。
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