嘘恋のち真実愛
「は? 彼女役?」

「何度か俺がやってと依頼するから、その時だけでいい。よろしく」


さらりと出された条件はとんでもないことだった。でも、依頼されたときだけでいいのなら……。常に彼女でいろというのでないから、受け入れてもいいだろう。


「わかりました」

「マスター、生ビールを二つください」


マスターは「はいよー」と軽快に返事してから、弾んだ声を出す。


「ふたりは偽りの恋人になるんだね。いやー、楽しそうだねー」

「はい、楽しみです。芦田さん、乾杯しましょう」

「全然楽しみではないですけど……」


マスターはもう店じまいだからと、自分の分のビールも用意して、私たちの乾杯に加わった。


「恋人感を出すために、ぜひうちを利用してね。ふたりとも近くに住んでいるしね」

「恋人感って……。部長はこの辺りにお住まいですか?」


部長が返事をする前に、マスターが口を開く。意外にマスターはおしゃべり好きだ。それに、なぜか部長の事情に詳しかった。


「そうそう! ゆりかちゃんちの向かい側に建った新しいマンションにお住まいなんだよ」

「えっ、去年建ったあの高級マンション? うちの会社の給料で住めます? 部長になるとそんなにもらえるんですか?」
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