嘘恋のち真実愛
「わあ、きれいな薔薇……」


一階の庭に、赤い薔薇のアーチがあった。きれいに咲いている様子に目が奪われる。

窓にへばりつく私の隣で、征巳さんも同じように庭を見た。


「ゆりかは薔薇が好き?」

「はい。征巳さんのマンションの薔薇もきれいに咲いていて、毎朝楽しませてもらいました」

「どうして薔薇が好きなの?」

「自分に似合わないから好きです。憧れのようなものですね」


私の返事に征巳さんは「へー」となぜかうれしそうに笑って、私の肩を抱く。


「似合わないというのは、ゆりかの思い込みだろうな。今日のお礼に薔薇の花束をプレゼントするよ。ゆりかに似合うものをね」

「花束? そんな豪華なもの、受け取れません。実は、花束よりも一輪の薔薇が好きなんです」

「一輪のほうがいいとは、ゆりからしいね」

「そうですか?」


至近距離にいる彼を見上げる。この距離は親密と言えるだろう。自然に触れあえている。この距離感を保てれば、きっとうまくいく。


「待たせて、すまないね」

「いや、時間ピッタリだよ」
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