嘘恋のち真実愛
征巳さんを心配して僅かに下がったテンションは、寿司を食べる時間が迫っていることで上向きになった。

彼もきっとお寿司を食べたら、元気になるはず。美味しい食べ物は疲れを吹き飛ばす効果がある。

私の勝手な理論だけど。

寿司店の前に立ち、外観から漂うオーラに絶対においしいお寿司屋さんだと、改めて思う。


「ゆりか、おいで」

「はい」


先を行っていた征巳さんが振り向いて、呼ぶ。しみじみ見ていないで、中に入らないと……小走りで彼のもとへ行く。

彼はドアを開けて、私を先に通してくれた。

「いらっしゃいませ」と和服姿の女性が、品のよさそうな振るまいで応対する。

一階は玄関だけで、客席は二階にあった。カウンター席とテーブルがあり、カウンター席に予約と書かれた札が置いてある。

私と征巳さんが座ると、先ほどの女性の方がおしぼりと緑茶を持ってきてくれた。

征巳さんは、手を拭きながら「ご無沙汰してます」と職人さんに挨拶をする。
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