嘘恋のち真実愛
「えっと、感動しました」

「ん? いきなりテンションが下がっていないか?」

「だって、征巳さんが……」


私は、口をもごもごさせて、手を重ねてもじもじした。ハッキリと言いにくい。笑顔の征巳さんが眩しすぎて、戸惑ったとは……。

加速する心臓の動きをおさえようとしても、ムリだ。当分、おさまらないだろう。

征巳さんは私を真っ直ぐと見据えるけど、私はその視線から逃れようとした。そんな私の顔を彼が覗きこむ。


「俺がなに? なんでも言って」

「なんでもと言われても、別になにも……」

「あ、そうだ。ちょっと待っていてくれる? 適当に座っていて」

「はい? えっ、どちらへ……」


突然なにかを思い付いたらしい征巳さんは、慌ただしく部屋を出ていってしまった。

どこへ行ったのか気になるが、今は離れてくれたことにホッとする。あのままだと思いを伝えるまで追いつめられただろう。

え、思い?
どんな?

自分の考えに自分で訊ねる。征巳さんに対する思いとは?

今日は自問自答することが多い日だ。
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