嘘恋のち真実愛
単なる褒美にしては、ひとつひとつの質が良すぎる。それで、私が好きだと言っていた薔薇を買ってくるなんて……期待度が高まる。


「そばにいて欲しいと」

「私に?」

「もちろん」

「どうして?」

「好きだから」


シンプルな想いを迷いなく告げる彼の持つ薔薇に、手を伸ばす。しかし、伸ばすものの、触れる一歩手前で止めた。


「私も……」

「ん?」


この期に及んで、まだ躊躇ってしまう……彼の気持ちを受け止めたいのに……。


「これ、受け取ってよ。ゆりか」

「はい、ありがとうございます」


薔薇だけは、すんなり受け取った。彼の手から私の手に薔薇は移る。ふわりと漂う香りに鼻腔をくすぐられて、薔薇に視線を落として「きれい」と呟いた。

見つめる先に影ができる。フローラルな香りに、柑橘系の爽やかな香りが 混じる。こちらも好きな香りだ。

征巳さんが近くに寄っている。彼の声は、頭上から聞こえた。


「ゆりかを喜ばせたくて」

「今日、私喜んでばかりいますよ」

「うん、そうだね。俺も喜ばせて欲しいな」
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