嘘恋のち真実愛
良い人は多いが、今まで恋愛感情を抱ける人はひとりもいなかった。魅力のない人ばかりというのではなく、私自身の問題なのだろうけど。


「会社にはいないかな。市原くん、いいなー。羨ましい」

「なんか意外だね。そんなに羨ましがるなんて」

「だって、この年になっても彼氏のひとりもいないなんてと、親に急かされるんだもの。この前もお見合いしてみないかと言われたし……相手がいるからと断れたらいいけど。はあーーーー」


盛大なため息をついて、生ビールをおかわりした。マスターは二杯目を置きながら、しみじみと言う。


「そうか、結婚を急かされる年頃になったんだね。いくつになった?」

「女性に年齢を聞くなんて失礼な……27です」

「ごめんね、つい聞いちゃった。俺からしたらまだまだ若いけど、親からしたら心配になる年齢なんだね」

「そうみたい。断ったけど、やっぱりお見合いしようかな。でも、自分で見つけたいから……あ、婚活サイトを覗いてみようかな」


「え、そこまで……」とマスターは途中まで言いかけて、席を立ったテーブル席にいたカップルの会計をするためにレジに行く。私はその間に二杯目を飲み干した。
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