嘘恋のち真実愛
頭がクラクラしてきた……。高いところにいる怖さからなのか、背後からの甘い言葉と爽やかな香りに包まれたせいなのか……どっちだろう。


「ゆりか、ゆりか? 大丈夫?」

「ん……征巳……さ、ん……」


体を軽く揺さぶられて、私は薄目を開けた、いつの間に閉じたのだろう。どのくらいの時間、閉じていたのかもわからない。

でも、まだしっかり開けれない。目だけではなくて、体にも力が入らない。


「椅子に座ろう。歩ける?」

「はい……」


部長に支えられて、近くにあったベンチ風の椅子に腰掛けた。体を起こしているのが辛く、彼の肩に頭を預ける。


「なにか飲み物買ってくるから、ひとりで待てる?」

「いや……ひとりにしないで」

「うん、わかった。落ち着くまでいるから、俺にもたれて」

「うん……」


隣にいてくれることに安心したら、再びまぶたが重くなる。迷惑かけていると思うのに、彼の厚意に甘えてしまう。

部長は寄りかかる私の頭をそっと撫でた。混乱で、異常な動きをしていた脳が徐々に正常に戻っていく。

だけど、まだしっかりと目を開けられない。
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