嘘恋のち真実愛
いつも企画案はギリギリに取りかかるが、今回はやる気が出ている今のうちにやっておこうと考えた。


「がんばっていますね。で、昼は一緒にどうですか？」

「うん、行こうか」


バッグを用意していると「鈴川くん」と誰かがが呼んだ。鈴川くんは「はい」と体を征巳さんの方に向ける。

その時、まだ征巳さんがフロア内にいたことに気づく。彼はたまに課長と食べることもあるが、ひとりで食べることが多いと聞いていた。

部下とはお互いに気を使うから、行かないとも。それなのに……。


「俺も一緒に行っていいかな？」

「えっ？ ああ、はい。いいですよね？ 芦田さん」

「ええ、三人で行きましょう」


なぜ私たちと行くことにしたのか……鈴川くんとなぜ？ と目で会話するが、お互い答えはわからないだった。

征巳さんがよく行っているというカフェに行く。会社の裏道を少し歩いて、右折したところにあるビルの地下に入った。

席に案内されて、私と鈴川くんは店内を見回す。レトロで落ち着いた雰囲気のあるカフェだった。征巳さんが、おしぼりで手を拭きながら、微笑む。
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