ロストラブレター

「よし」小さくつぶやき、自信をつけるように頷く。
手汗は尋常ではないが、もう慣れてしまった。
いくぞ、と心の中で掛け声をし、3年生の下駄箱へと向かう。

下駄箱へ入る手前、辺りを見渡し人が居ないタイミングを見計らって先輩の下駄箱めがけ走った。

右奥列の13番目…1番上の段。
目を走らせながら数を数え、ついに
『黒瀬』の文字を見つけた。

遥に頼み、下駄箱の位置を調べてもらっていたのでスムーズに見つける事ができた。
もちろん、頼むときは友達が黒瀬先輩の事が好きで協力している、という体で話したのだ。

後は手紙を入れるだけ。

「…あ、あれ」
スクールバッグから手紙を取り出そうとして気づいた。
私、手が震えている。落ち着いたと思っていたが、やはり緊張は抜けきれていないようだ。
そんなことより、早く入れないと誰か来ちゃう。
震えも手汗も気にせず、手紙をカバンから引っ張り出した。

「っ、ぇえ?」先輩の下駄箱の取手を掴み、いざ手紙を入れようと思いっきり引っ張ったが何故か開かない。
「ちょ、ちょっと」無理やり開けようと力任せに引っ張るが開く気配が感じられない。
先程までの緊張と打って変わって、今度は焦りがじわじわと広がっていく。
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