一夜の過ちで授かったら、極上御曹司に娘ごとたっぷり溺愛されています

会社の少し前で車を止めてもらい、私はカバンをもってドアノブに手をかけた。

「一緒には出勤すれば楽なのに」
ハンドルに頭を乗せ私を見る真翔さんを、私は軽く睨みつける。

「そんなことできるわけないですよね。どんな噂が立つと思ってるんですか?」
「どんなって、付き合ってるとかそれぐらいだろ?」
何の問題もないと言った真翔さんの態度に、私は小さく息を吐く。

「私がシングルマザーだって、結構な人が知ってますよ」
「それで?」
「それでって……」
そんなことが噂になれば、困るのは真翔さんだ。
変な噂で真翔さんに迷惑がかかるのは不本意だ。

「ダメなものはダメです」
それだけを言うと、私は車を降りた。
「咲綾、また後で」
後ろから聞こえた声に、チラリと振り返ると小さく手を振る真翔さんがいた。
そんな真翔さんに、つい私も笑顔が溢れる。
無意識に手を振ってしまい、周りを慌てて確認する。
そんな私に、真翔さんは声を上げて笑っていた。

「真翔さん!」
怒って声を上げた私に、真翔さんは「ごめんごめん」と言いながらも笑っていた。
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