その上司、俺様につき!
謎解きは定時後の会議室で
心と体は繋がっている。
私は今日ほど、それを実感した日はない。
「ふう……」
つい先ほど、本日最後の面談を終えた。
私はすっきりした気持ちで、手にした資料をトントンと揃える。
「お疲れさまでした!」
そしてにこやかに、机を挟んだ目の前でぐったりしている久喜さんに声をかけた。
「……女性は、強い生き物だな」
感心と唖然のちょうど真ん中を取ったくらいの調子で、彼はボソッとつぶやく。
私は社長のコーヒーのおかげもあってか、あれほど酷かった二日酔いの症状はさっぱり消えていた。
久喜さんに関する心配事が、ほぼほぼ解消されたことも大きかったと思う。
一方彼の方はというと、今朝も具合が悪そうだったが、現在はそれに輪をかけて辛そうな様子だ。
面談用の会議室は白い壁に白いテーブルと、殺風景な雰囲気なので、余計に彼の顔色の悪さが際立ってしまう。
「今日は、早く帰られた方がいいと思いますよ?」
心配そうな声音で助言すると、久喜さんが視線を上げて私を見つめる。
その瞳には、まるで聖母や女神を崇拝するような、感謝が満ち溢れていた。
「遠藤……」
「―――と言いたいところですが」
パッと明るい顔になった彼をあざ笑うかのように、私は手のひらを返して言った。
「今朝のこと、きっちり説明してください!」
本日は急遽、午前の面談のスケジュールを全てキャンセルしてしまったため、そのしわ寄せが午後にドッとやってきた。
今日以外にも都合がつく人は別の日に面談の予定を組み、予定が詰まって動けない人は何とか午後にスケジュールをねじ込んだ。
私が出勤しなかったことが予定が押した最大の原因だが、久喜さん自身も自分に非があると自覚していた。
そのため、午後からは2人して遮二無二働いた。
もしかしたら今日だけで、1週間分以上の実績をあげたかもしれない。
そんな激務を終え、彼の表情は今すぐにでも帰りたいと訴えていた。
でも、そんなことが許されるはずはない。
はぐらかされたままになっている社長室での出来事を、洗いざらい白状してもらわなければ、私の気が収まらなかった。
< 86 / 98 >

この作品をシェア

pagetop