一途な恋とバックハグ
自席に戻ると隣の先輩に「怖かったしょ~よく耐えたねえ~」と労いの言葉を貰えたけど私は強張らせた顔でいいえと首を振り早速資料の修正に取り掛かる。
「いつでもチェックするから遠慮しないで言ってね」と優しく言われ、ありがとうございますとお礼だけ言ってまた顔を引き締める。
先輩は相当怖かったんだねえと気の毒そうに言ってくれるけど、私は気を張っていないと顔が緩んでしまいそうで必死だった。

だってだって!課長が初めてにしては良く出来ているって褒めてくれたんだよ!
ミスを直せば完璧だとまで言ったんだよ!

その言葉に怒られたことなんて一ミリも思い出せないほど吹っ飛んでしまったよ。
その前から聞いてるようで聞いてなかったかもしれないけど!

あ~嬉し過ぎてこの感動を誰かと分かち合いたい。
でも、誰にも言えないな~。
だって課長の話題を出すだけでみんな嫌がるし…。
残念に思いながらも必死になってミスを直して今度は先輩にちゃんとチェックをしてもらって課長の机に資料を置いた。
今課長は会議中でいないのが残念だ。

修正した資料を見てもらって「うん、良く出来ている。すみれは偉いな、よしよし」と褒められたい!と、勝手な想像をしてまたニヤケそうになって慌てておかしな想像を振り落した。

でも実際されたら破壊力半端ないかも!!ギャップ萌えというやつだ。
課長がそんなことするわけないよね~。

せめて課長の笑顔を見てみたいなあと、半ば無理な願いを思ってみたりした。

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