3分遅れのアンダンテ
「お疲れ様、奏音ちゃん」
お店の裏に入ると、ちょうど祈先輩と鉢合わせた。
「祈先輩こそ、今まで本当にお疲れ様です」
せっかく堪えた涙がまた溢れだしそう。
「奏音ちゃんと一緒にここで働けてよかったよ。今までありがとうね」
「うっ……そんなこと、言わないでくださいよっ」
祈先輩はずるい。
そんな優しい言葉……我慢してたのに。
涙が溢れて止まらない。
「あぁ、ごめん。泣かすつもりじゃなかったんだけど……奏音ちゃんは優しいね」
「それ、はっ……いのり、先輩の方ですっ」
泣いているせいか上手く話せない。
「……っ!?」
ふわりと包まれる私の体。
今私がいるのは、祈先輩の腕の中だと気づくまでに時間がかかった。
私……今、祈先輩に抱きしめられてる?