3分遅れのアンダンテ



「俺、明日引っ越しなんだ」



「えっ……」



耳元で先輩の声が聞こえる。



「もし時間あったら見送りに来てくれたら嬉しいな。明日午後3時発の電車に乗っていくからさ」



まさかお見送りに来て欲しいなんて祈先輩から言われるとは思っていなかった。



「待ってるよ、奏音ちゃん」



「……っ」



スっと離れた祈先輩は、私の頭をポンポンとして部屋から出ていった。



祈先輩に触れられたところがじんわりと熱を持つ。



祈先輩に抱きしめられた。



祈先輩に頭ポンポンされた。



時間が止まったかのようにゆっくりと流れて、とても幸せな時間だった。



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