3分遅れのアンダンテ



祈先輩と全く同じだったシフトは夕方までの勤務。



アルバイトが終わるまであと10分。



夕飯まではまだ少し時間があるからか、店内は空いていた。



「いやぁ、君が居てくれて本当に助かったよ。今日で退職なのは残念だが地元に戻ってきた時は是非寄ってくれたら嬉しいよ」



「いえ、本当にお世話になりました。何もかも店長のおかげですよ。ありがとうございます」



店の奥では、ちょうどここの店長が出勤してきたようで祈先輩と店長の話し声が聞こえた。



別れの挨拶を聞いて、本当にこれが最後なのだと実感する。



あぁ、どうしよう。



視界が潤んで今にも涙が出てしまいそう。



必死に上を向いて、涙がこぼれてしまわないようグッと堪えた。



そしてついに、退勤時間になってしまった。


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