3分遅れのアンダンテ
祈先輩に、もう会うことができない。
すっかり気力を失ってしまった私。
私が家に帰るために乗らなければならない電車はさっきの事故のせいか遅れが出ていた。
それまではどこかでぼーっとしていよう。
今はひとりになりたい。
こんなところで泣くことはできない……
そう思うのに体と心は正直で、立っているのもやっと、頬には涙が静かに流れていた。
フラフラとホームを歩く。
どこか座るところ……とりあえず改札を出よう。
「おっと……危ないよ、奏音ちゃん」
何かに躓いて転びそうになった時に誰かが私の体を支えてくれた。
「ありがと……せ、せん、ぱいっ?」
聞き覚えのある優しい声。
なんで祈先輩の声がするの。
聞き間違い?
ううん、そんなはずない。
私がこんなに大好きな祈先輩の声を聞き間違えるはずがない。
「なんで、祈先輩がここに……」
先輩が乗るはずの電車は、さっき私の目の前で行ってしまったのに。