3分遅れのアンダンテ



「奏音ちゃんがさっき必死に俺の事を探してた電車は行先が違うやつだよ」



「一体、どういう……」



「実はね、」



さっきの事故で全線に遅れが出てしまった。



そのせいで祈先輩が乗る予定電車は乗車ホームが変更になり、路線の関係で3分遅れの発車になったらしい。



「…じゃあもうそろそろ電車の出発時間……」



「うん、ゆっくりと話せないけどごめんね。でも、奏音ちゃんに会えてよかったよ」



祈先輩の大きな手。



乗せられた頭がじんわりと熱い。



「祈先輩っ、これ……今までのお礼です!本当にありがとうございましたっ」



手の重さにハッと気がつき、とっさに渡す。



「ありがとね、奏音ちゃん」



「い、祈先輩!あのっ……!」



伝えなきゃ。



祈先輩に私の気持ちを伝えなきゃ。



このままサヨナラしてしまったら、絶対私は後悔する。


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